不動産を売却しても、売却額の全額に譲渡所得税がかかるわけではありません。譲渡価額から取得費と譲渡費用を差し引き、特別控除後に残る課税譲渡所得を基に税額を計算します。税額は所有期間(売却した年の1月1日時点で判定)や費用、特別控除の適用によって変わるため、正確な把握が大切です。
取得費の資料準備、建物の減価償却の確認、3,000万円特別控除の要件チェックに加え、印紙税や登録免許税など、控除の可否から申告・納付まで順を追って確認しましょう。
不動産売却・買取は売却益がなければ譲渡所得税は原則かからない
売却額が大きくても、取得費と譲渡費用を引いた利益が0円以下なら、譲渡所得に対する税額は原則として生じません。
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不動産売却で生じる税金と費用を一覧表で確認する
不動産を売ったとき、確認したいのは売却代金そのものではありません。売却代金から取得費と譲渡費用を引いて売却益を計算し、その税金とは別に、契約書や抵当権抹消で支払うお金があるかを見ます。たとえば売却益が出なければ譲渡所得に対する税額は原則として生じませんが、紙の契約書を作る場合の印紙税は別です。
区分 | 主な内容 | 発生する場面 |
譲渡所得に対する税金 | 所得税、復興特別所得税、住民税 | 売却益が出たとき |
印紙税 | 売買契約書に貼る収入印紙の税金 | 紙の契約書を作成するとき |
登録免許税 | 抵当権抹消登記にかかる税金 | ローン完済後に抵当権を消すとき |
売却に伴う費用 | 仲介手数料、測量費、解体費、司法書士報酬など | 依頼内容や物件の状況に応じて発生 |
土地・建物の売却益は、給与などの所得とは分けて計算する分離課税です。課税の土台は「譲渡価額-(取得費+譲渡費用)」であり、売却代金の全額に税金がかかるわけではありません。売却額と課税対象額が同じではない点が、最初の確認ポイントです。
買取でも仲介売却でも譲渡所得税の計算方法は基本的に同じ
不動産会社が直接買い取る方法でも、買主を探す仲介売却でも、個人売主の譲渡所得の考え方は同じです。計算の軸になるのは、実際の売却価額、購入時にかかった取得費、売却のために直接支出した譲渡費用。売却方法の名称で税額が決まるわけではありません。
仲介では、仲介手数料が譲渡費用になることがあります。買取では通常、仲介手数料は発生しません。ただし、売却価額や必要な整備・測量の内容は取引ごとに異なるものです。そのため、「買取なら税金が安い」とはいえません。比較する際は、提示額から税金と諸費用を差し引いた後の手取りで見比べるとよいでしょう。
赤字で売却しても印紙税や登記費用などがかかる場合がある
譲渡所得が赤字なら、原則として譲渡所得に対する税額はかかりません。それでも、紙の売買契約書を作成する際の印紙税、住宅ローン完済後に抵当権を抹消する際の登録免許税、依頼した専門家への報酬などは別に発生することがあります。売却益への税金とは別の支出です。
契約書の記載金額が10万円を超える不動産譲渡契約書には、令和9年3月31日までに作成する分を対象とした印紙税の軽減措置があります。赤字で売る予定の不動産でも、契約前に「何の支出が、いつ必要か」を並べておけば、決済日に準備すべき資金が見えやすくなります。手取りの見通しを立てるための準備です。
不動産売却の譲渡所得税を3ステップで計算する
- 譲渡所得の算出:売却価額から取得費と譲渡費用を差し引く
- 課税譲渡所得の確定:譲渡所得から利用可能な特別控除を差し引く
- 税額の算出:課税譲渡所得に所有期間に応じた税率を掛ける
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譲渡所得の計算式を図解で確認する
土地・建物の売却益は分離課税です。譲渡価額から取得費と譲渡費用を引き、利用できる特別控除を差し引いたうえで、所有期間に応じた税率を掛ける3段階の計算です。確定申告では、ほかの所得と併せて申告書を作成します。
売却代金の全額が利益とは限りません。購入時の資料や売却費用の領収書が、手取りと税額を左右する資料です。
取得費は購入代金・購入時の諸費用から建物の減価償却費を差し引く
取得費は、購入代金・建築代金のほか、購入手数料、設備費、改良費などを基にします。自宅として使っていた建物では、購入・建築代金等から所有期間中の減価償却費相当額を差し引く扱いです。
非業務用建物の減価償却費相当額の計算式は、「建物取得価額×0.9×償却率×経過年数」です。経過年数は、6か月以上の端数を1年とし、6か月未満を切り捨てるルールです。上限は建物取得価額の95%となります。
購入時の契約書や精算書がない場合、または実際の取得費が譲渡価額の5%未満の場合には、譲渡価額の5%を概算取得費として使えます。相続不動産では、被相続人が購入した際の契約書も確認します。
仲介手数料や解体費など譲渡費用にできる支出を整理する
譲渡費用は、売却のために直接支出した費用です。仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、立退料、土地を売るための建物取壊し費用などが該当します。
保有中の修繕費や固定資産税、引越し費用は、売却に関係していても譲渡費用になるとは限りません。領収書と契約内容を見て、売却への直接性を確認します。
所有期間は売却した年の1月1日時点で判定し、税率が変わる
所有期間は、売却した年の1月1日現在で判定します。5年を超えていれば長期譲渡所得、5年以下なら短期譲渡所得です。築年数とは別の基準なので、古い住宅でも取得後間もなく売却すれば短期に区分されます。
長期譲渡所得は所得税15%・住民税5%、短期譲渡所得は所得税30%・住民税9%です。平成25年から令和19年までは、所得税額に対して2.1%の復興特別所得税も申告・納付します。
相続や贈与で取得した土地・建物は、原則として被相続人や贈与者が取得した日から所有期間を通算します。
売却益が出た場合の譲渡所得税をシミュレーションする
売却価額が5,000万円、取得費が4,000万円、譲渡費用が200万円なら、特例前の譲渡所得は800万円です。この金額に所有期間別の税率を用いて税額を概算します。
所有期間の区分 | 税率の合計 | 税額の概算 |
5年超の長期譲渡所得 | 20.315% | 162万5,200円 |
5年以下の短期譲渡所得 | 39.63% | 317万400円 |
この例でマイホームの3,000万円特別控除を適用できれば、800万円の譲渡所得は控除の範囲内です。課税譲渡所得は0円になります。共有持分や土地・建物の購入額の内訳、特例の適用可否まで確認して申告額を固めます。
譲渡所得税を抑えられる控除・特例と適用条件
- 3,000万円の特別控除:マイホーム売却時に譲渡所得から最高3,000万円を控除
- 軽減税率の特例:所有期間10年超のマイホームに適用(3,000万円特別控除との併用可)
- 空き家の3,000万円特別控除:相続した空き家を売却する際に利用可能
- 買換え特例:譲渡益への課税を将来に繰り延べる制度
- 損益通算・繰越控除:住宅ローンが残るマイホームを損失で売った場合に検討
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マイホーム売却で利用できる3,000万円の特別控除
居住用財産を売った場合、一定の要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例です。対象には、現に住んでいる家屋と敷地のほか、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る以前の居住用家屋などが含まれます。
控除額は譲渡所得が上限です。譲渡所得が800万円なら、控除額も800万円となります。親子や夫婦など特別な関係にある人への売却は対象外であり、前年・前々年の特例利用状況も確認が必要です。
所有期間10年超のマイホームに適用できる軽減税率の特例
売却年の1月1日時点で、家屋と敷地の所有期間がともに10年を超えるマイホームでは、軽減税率の特例を検討できます。対象となるのは、3,000万円特別控除後の課税長期譲渡所得です。
6,000万円以下の部分には所得税10%・住民税4%が適用され、超える部分は所得税15%・住民税5%となります。3,000万円特別控除との併用は可能です。一方で、買換え特例などとの組み合わせには制限があるため、売却前に適用関係を整理しましょう。
相続した空き家の売却で検討したい3,000万円特別控除
相続した空き家には、被相続人の居住用財産に係る特別控除があります。相続・遺贈で取得した家屋または敷地を、平成28年4月1日から令和9年12月31日までに売却する場合、一定要件のもとで最高3,000万円を控除できる制度です。令和6年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上の場合、控除額は最高2,000万円となります。
被相続人の居住状況、建物の建築時期や登記形態、相続後の利用状況、耐震基準への適合や取壊し、売却期限が要件です。マンションのような区分所有建物登記がある建物は、対象家屋に含まれません。
住み替え時に検討する特定の居住用財産の買換え特例
買換え特例は、税金をなくす制度ではなく、譲渡益への課税を将来に繰り延べる制度です。新しい住宅に利益が引き継がれるため、その買換え住宅を売る際に税負担が生じることがあります。
国内の住宅同士であること、居住期間や所有期間、売却価額、買換えの時期・面積などに条件があります。3,000万円特別控除や軽減税率とは選択適用です。次の住宅を売る可能性も含めて、利用する特例を判断します。
住宅ローンが残るマイホームを損失で売った場合の損益通算・繰越控除
土地・建物の譲渡損失は、原則として給与所得などと損益通算できません。ただし、住宅ローン残高を下回る価額でマイホームを売却し、一定要件を満たす場合は例外があります。所有期間が売却年1月1日時点で5年超であることなどを満たせば、損失を他の所得と通算し、控除しきれない額を翌年以後3年間繰り越せる場合があります。
繰越控除を受ける年は、合計所得金額が3,000万円以下であることが条件です。契約日前日のローン残高、売却価額、売却先との関係も確認します。
特例の併用可否、売却期限、確定申告の要件に注意する
特例は、売却した年だけでなく前年・前々年の利用歴も関わります。居住用の3,000万円特別控除では、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日という期限が基準です。売却予定日を決める前に、転居日と過去の申告内容を確認します。
控除で税額が0円になる場合も、特例を受けるには確定申告が必要です。買換え特例や譲渡損失の繰越控除では必要書類・申告期限が適用条件になります。購入時と売却時の契約書、費用の領収書、特例ごとに求められる書類がそろっているかを、申告内容と照らして確認します。
不動産売却時に支払う税金・費用と確定申告の進め方
紙の契約書を作る場合、契約金額が1,000万円超5,000万円以下なら、軽減後の印紙税は1通につき1万円です。
売買契約書にかかる印紙税と軽減措置の確認方法
印紙税は、紙で作成する不動産譲渡契約書の記載金額に応じて決まります。令和9年3月31日までに作成する契約書には軽減措置があり、1,000万円超5,000万円以下は1万円、5,000万円超1億円以下は3万円です。
原本を売主・買主が各1通保管するなら、それぞれの印紙税を確認します。記載金額が10万円以下は200円、1万円未満は非課税です。契約前に、原本・写しの扱いを仲介担当者へ確認しておきましょう。
抵当権抹消で必要になる登録免許税と司法書士費用
住宅ローンを完済して売却する場合、抵当権抹消登記を行います。登録免許税は土地または建物1物件につき1,000円で、土地1物件と建物1物件なら合計2,000円です。
登記簿上の住所や氏名が現在と異なると、抹消前に変更登記が必要となることがあります。司法書士へ依頼する場合は、登録免許税とは別に報酬がかかります。金融機関から受け取る抹消書類と依頼範囲は、早めに確認するのが無難です。
仲介手数料の消費税、測量費、解体費など売却に伴う費用
仲介で売却する場合、仲介手数料には消費税が加わります。境界確認が必要な土地では測量費、古家を取り壊して土地として売る場合は解体費が生じることがあります。費用の有無や金額は、土地の形状、境界、建物の状態、契約条件で変わります。
仲介手数料や測量費、解体費のように売却へ直接結び付く支出は、譲渡費用となることがあります。領収書のほか、見積書や請求書も保管しておくと支出目的を説明しやすくなります。
所得税・復興特別所得税・住民税の納付時期と確定申告の必要書類
売却益が出た場合や特例を利用する場合は、売却した年の翌年の確定申告期間に申告します。国税庁の確定申告書等作成コーナーでは、金額を入力して申告書、付表、明細書を作成できます。
主な書類は、売却時・購入時の売買契約書や精算書、仲介手数料・測量費などの領収書です。相続不動産では遺産分割協議書など、自宅の特例では居住状況や登記内容を確認できる書類も加わります。
所得税と復興特別所得税は確定申告に合わせて納付し、住民税は申告内容を基に自治体から案内されます。売却代金を使う前に、税金と未払い費用を分けておくと安心です。
まとめ
手取りを見誤らないためには、売却額から取得費と譲渡費用を差し引き、控除後の課税譲渡所得を出してから税率を当てはめます。所有期間の区分は、売却した年の1月1日時点で5年を超えるか、5年以下かによって決まります。マイホームの売却では、最高3,000万円の特別控除も確認したいところです。
利益が出なかった場合でも、紙の売買契約書には印紙税がかかることがあります。抵当権を抹消するなら、登録免許税も手取りから差し引かれる費用です。
自宅や相続不動産、住宅ローンが残る住まいを売るときは、契約前に購入時の資料と費用の領収書を集めておくと、取得費や譲渡費用を整理しやすくなります。特例の対象になるかは、住んでいた時期、所有期間、相続後の利用状況などで変わります。売却条件を決める前に、手元の契約書や領収書をもとに確認するのが近道です。
出典
- 土地や建物を売ったとき — https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_3.htm
- No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
- No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
- No.3211 短期譲渡所得の税額の計算|国税庁 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3211.htm
- No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例|国税庁 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3305.htm
- No.3261 建物の取得費の計算|国税庁 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3261.htm
- No.3208 長期譲渡所得の税額の計算|国税庁 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm
- No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)|国税庁 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm
- No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置|国税庁 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7108.htm
- No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例|国税庁 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3355.htm
- https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001415367.pdf — https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001415367.pdf
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